アスベストは、耐火性や断熱性、吸音性に優れている特性から「奇跡の鉱物」とよばれ、多くの建造物で用いられていました。しかし、空気中のアスベストを吸い込んでしまうと、石綿肺やがんの一種である中皮腫を引き起こすことが分かったため、現在は使われていません。今回はアスベストを含む建材や素材の見分け方を解説します。
アスベストが含まれる建材
アスベストは、自然界に存在する繊維状の鉱物で、石綿(せきめん・いしわた)とよばれています。鉱物でありながら、まるで綿のように軽い物質です。それでいて、断熱効果や耐火性能に優れ、酸やアルカリによる変化を受けにくい性質を持っています。しかも、コストが安かったことから、建材や摩擦材として幅広く用いられました。
アスベストを含む建材の代表が吹付け石綿です。吹付け石綿とは、アスベストとセメントに水を加え、一定の割合で混ぜ合わせた混合物です。この混合物を吹付け機で必要な箇所に付着させました。使用期間は1956年ごろから1975年ごろまでです。使用する目的は壁や天井の耐火性・防火性・吸音性の向上です。1987年以降、吹付け石綿の表面に固化剤などを塗る封じ込めが実施されたため、目に見えない部分で吹付け石綿が存在している可能性があります。
1975年に吹付け石綿が禁止された後、1990年頃までアスベスト含有率5%以下のものが使用されていました。吹付け石綿と吹き付けロックウールは見た目が類似しているため、見た目だけで判断するのは困難です。
1989年まで使用されていたバーミキュライト(吹付けひる石)にもアスベストを含むものがあります。結露の可能性がある部屋の天井や防音性を高めたい部屋の天井などで使用されていました。ほかにも、住宅の内装材のなかにはアスベストを含むものがあります。アスベストを含む可能性がある建材は以下のとおりです。
・石綿含有耐火被覆板
・石綿含有断熱材
・石綿含有整形版
・スレート波版
・スレートボード
・ケイ酸カルシウム板
・スラグ石膏板
・パルプセメント板
・押出成形セメント板
・窯業系サイディング
・住宅用屋根化粧スレート
・ロックウール吸音天井板
アスベストを含む割合は製造年代で異なりますが、一般的に古い年代ほど含有率が高まります。
アスベストに似た素材
アスベストに似た素材としてロックウールとグラスウールがあります。それぞれの特徴をみてみましょう。
ロックウール
ロックウールは人工的に作られた鉱物繊維です。製鉄時に生み出される高炉スラグや玄武岩などから作られるもので、一度、材料となる高炉スラグや玄武岩を1,500〜1,600℃の高温で溶かしてから、強い遠心力を利用して繊維状に加工します。燃えにくく湿気に強い特性があり、吸音性や断熱性も優れているため、建材として広く用いられました。
アスベストと似た見た目で、効果も似ていることから、同じように発がん性があるのではないかと疑われる素材ですが、全くの別物で発がん性がありません。製鉄時に排出される高炉スラグをリサイクルするため、環境負荷が低い製品です。
グラスウール
グラスウールも、人工的に作り出された繊維です。グラスウールの原材料は回収されたリサイクルガラスで、断熱性や吸音性、不燃性、耐久性に優れています。リサイクルした資源を使うため、環境負荷が低い製品だといえます。安全性が高い物質で、長期間にわたって世界中で使用されてきました。
建材や製品に潜むアスベストの見分け方
建材や製品の中にあるアスベストは、どのように見分けたらよいのでしょうか。製品ごとにみていきましょう。
吹付け石綿の見分け方は、外見と柔らかさです。綿状で柔らかく、青・灰・白・茶色の見た目で、針で刺すと数cmにわたって貫通する場合は、吹付け石綿の可能性が高くなります。
吹付け石綿とよく似ているのが吹付けロックウールです。アスベストを含んでいるかを外見から判断するのは困難なため、サンプルを採取して分析しなければなりません。バーミキュライトは、表面がでこぼこして弾力があり、キラキラした鉱物が見えることがあります。
また、年代によってもアスベストの有無を判別できます。吹付けアスベストが使用されていたのは1956年から1975年までです。1975年以前に建てられた建造物には、アスベストが何らかの形で使用されている可能性が高まります。以後、アスベストの規制が強まっているため、建物の建築年代が古いほど、アスベストを使用している可能性が高いといえるでしょう。建築年代がわからなかったり、見た目で判別できない場合は、専門業者による分析が必要です。
まとめ
今回はアスベストを含む建材について解説してきました。アスベストは優れた性能を持つ建材として使用されてきましたが、健康被害を引き起こすことがわかってから、徐々に使用が制限・禁止されていきました。ポイントになる年代は1975年で、それ以前の建築物の場合、アスベストを含む可能性が高まります。
硬さや色でアスベストを見分けられる場合もありますが、わからないこともあります。見た目などでアスベストを含むかわからないときは、専門業者に調査を依頼したほうがよいでしょう。