アスベストとは?種類や有毒性について紹介
アスベスト調査をする前に知っておきたいのが、アスベストがどのようなものであるかです。ここでは、アスベストの種類や有毒性などについて詳しくご紹介するので、アスベストがなぜ問題視されているのかを確認しておきましょう。
アスベストの種類
アスベストは6種類に分類することができますが、代表的なものとして下記が挙げられます。
クリソタイル
クリソタイルは、日本では「白石綿」と呼ばれる白色のアスベストで、世界で使用されていたアスベストの9割以上がこれに該当するとされています。その繊維は、比較的柔軟で曲がりやすく扱いやすいという特徴があり、建築、製造業、船舶などのさまざまな分野で広く使用されましたが、日本では2004年から製造も使用も原則的に禁止となりました。
クロシドライト
クロシドライトは、青いアスベストとして知られており、日本では「青石綿」と呼ばれています。非常に繊細で脆い繊維を持ち、耐熱性が高いことから絶縁材料や製品に使用されました。しかし、クロシドライトはほかの種類のアスベストよりも健康への悪影響が大きいとされており、1995年から製造禁止となっています。
アモサイト
アモサイトは、うっすらと茶色を帯びたアスベストで「茶石綿」と呼ばれ、主に絶縁材料や建材として使用されていました。クロシドライトと同様に健康への悪影響が大きいと考えられており、1995年から製造禁止となっています。
アスベストの有害性
アスベストは、その微細な繊維が空気中に浮遊して人体に吸引された場合に、健康に深刻な悪影響を与えることから、原則的に製造も使用も禁止されている物質です。おもな健康リスクとして、肺がんや悪性中皮腫などの発がん性が明らかになっています。アスベストが肺に入り込むことで、炎症や異物反応が引き起こされ、がんの発生を促してしまうのです。
また、アスベストによって引き起こされる肺の疾患などから肺機能が低下し、呼吸器不全を引き起こす可能性もあります。酸素が取り入れられにくく、二酸化炭素が排出しにくい状態になり、生命に関わる危険な症状になることもあるのです。とくに発がんなどの有害性はクロシドライトが最も強く、その次にアモサイト、クリソタイルとなっています。
アスベストの特性
アスベストは、繊維状の鉱物で非常に軽く、耐熱性、耐火性、絶縁性に優れているという特性があります。また加工性や安定性があり、価格が安いということから、建築や製造業で広く利用されていたのです。
このメリットが大きかったことから、有毒性を指摘されるまで多くの場所で使用されてしまい、現在でも古い建物などにはアスベストが使用されている可能性もあります。アスベストが繊維として吸入されると、呼吸器系に深刻な影響を及ぼすことから、現在多くの国でアスベストの使用が禁止されており、取り扱う場合にも十分な注意が必要です。
アスベスト調査はなぜ必要?必要な理由やどんなケースで調査が必要なのか紹介
アスベストは以前から多くの現場で使用されてきた物質ですが、なぜ今になって調査を行わなければならないのでしょうか。ここではアスベスト調査の概要や、調査の必要性、またアスベスト調査が必要なケースをご紹介します。
アスベスト調査とは?
アスベスト調査は、建物や施設内でアスベストが使用されているかどうか、またはアスベストに関するリスクがあるかどうかを確認するための調査です。アスベストの調査や分析を専門機関や会社が担当し、「書面調査」「現地調査」「試料の採取」「分析」という大きな4つのステップで行われます。
アスベストが使用されていた時代に建てられていた建造物や、古い建物にはアスベストが含まれている可能性があるため、解体や改修工事の前に調べてもらい、安全に工事を進めていくことが大切です。それでは、なぜ今になってアスベスト調査をしなければならないのでしょうか。
なぜアスベスト調査が必要なのか
アスベスト調査の1番の目的は、アスベストが健康に及ぼすリスクを未然に防ぐためです。健康被害としてアスベストは、慢性呼吸器疾患や肺がん、間皮腔腫などの疾患のリスクを増加させることが知られています。
またアスベストが使用されている建物や施設が公共の場であれば、その安全性を確保するためにアスベスト調査が重要です。特に建物の取引やリノベーションが計画されている場合は、新たな住民や作業者の安全を確保するために、アスベストの有無を把握する必要があります。
万が一アスベストが見つかった場合、そのリスクを評価し、アスベストの除去、封じ込め、適切な管理計画の策定といった対策を講じることが必要です。アスベスト調査は、これらのリスク管理策を計画するためにも不可欠な調査であるといえるでしょう。
アスベストの事前調査が義務化?必要なケースとは?
アスベスト調査が必要なのは、アスベストが健康に害を及ぼす可能性があるためでもありますが、大気汚染防止法などの法改正により、原則的に必須となっていることも理由のひとつです。令和2年に事前調査が法定化され、令和4年4月1日からは調査後に一定規模以上の工事については、アスベストの有無に関係なく結果報告も義務化されています。
さらに令和5年10月以降に着工する工事からは、有資格者による調査も義務となりました。ただし素材に明らかにアスベストが含まれていない場合や、工事の際の釘抜きや釘打ちなど、素材に対して極めて軽微な損傷しか与えない場合は、アスベストが飛散するリスクがないため事前調査は求められません。
また塗装や材料の追加のみ行う工事でも、アスベスト調査は不要となっていますが、基本的に解体や改造、改修を行う際には、原則としてアスベスト調査が必要であると考えていいでしょう。
アスベスト調査・分析にかかる費用はどのくらい?
アスベスト調査や分析を依頼する場合に、事前に確認しておきたいのが費用についてです。ここでは事前調査、分析それぞれの費用相場をご紹介するので、ぜひチェックしてみてください。またアスベスト調査・分析に対応している補助金の制度についても、併せてご紹介します。
事前調査費用
アスベスト調査の費用は、調査対象の建造物の規模や現場の状況などにより大きく変動するため、一概にいくら位であるとはいえません。ご紹介する相場は調査対象あたりの価格となっているので、その対象が増えればその分費用も高くなります。
書面調査:1現場につき2万円~3万円
現場調査:1現場につき2万円~5万円
ただし大規模な建物や複雑な構造を持つ建物ほど、調査にかかる時間や労力が増す可能性があります。また調査する地域や業者ごとにも料金の差異が発生するので、調査対象の地域の相場を調べておくことも大切です。
分析費用
アスベストの分析費用は検査項目や内容、依頼する機関などによっても大きく変わります。目安は下記のようになっています。
定性分析:1検体につき3万円~6万円
定量分析(X線回析分析法):1検体につき3万円~10万円
定性分析+定量分析:1検体につき4万円~15万円
定性分析とは、吹付け材や保温材などの建材にアスベストが含まれているか否かを調べる分析です。「偏光顕微鏡法」「位相差分散顕微鏡法・X線回析法」などの方法で、アスベスト繊維があるかを調べます。もしもアスベスト繊維がみつかった場合は、必要に応じて定量分析をして、含有量を明確にします。
アスベストの調査・分析を依頼するとしたらどんな点を重視する? WEBアンケートで調査!
ここまで、アスベスト調査・分析について解説させていただきましたが、実際にアスベストの調査・分析を依頼するとしたらどんな点を重視したい方が多いのでしょうか?WEBアンケートで皆さんに聞いてみました。
第1位は「分析精度の高さ」でした。アスベストの調査・分析を行っている会社はいくつかありますが、その中でも分析精度が高い会社を選ぶことが大切です。分析精度の高い会社を選ぶためには、どのような機器や技術を用いて調査しているのかや、定期的に外部監査を受けているかどうかなどをチェックしましょう。
第2位は「実績の豊富さ」でした。調査実績は、信頼性の指標になります。実績が豊富であれば技術力や調査の実力もある程度保証されていると考えて良いでしょう。
第3位は「専門知識のあるアナリスト」でした。専門知識を持つアナリストが在籍している調査会社を選ぶことで、より精度の高いアスベストの調査・分析が実現できます。アスベストの調査・分析を依頼する際は、熟練のアナリストや鉱物の博士など専門知識を有しているメンバーがいるかどうかもチェックしましょう。
アンケートの結果は以上となります。次の見出しでは信頼できるアスベスト調査・分析会社の選び方のポイントについて、さらに詳しく解説させていただきます。
信頼できるアスベスト調査・分析会社の選び方のポイント
アスベスト調査・分析会社は東京にもいくつか存在していますが、どこに依頼するべきか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。ここでは、信頼できるアスベスト調査・分析会社を見逃さないためにチェックしたいポイントをご紹介するので、ぜひ参考にしながら依頼先を選定してください。
分析精度の高さ
正しい分析をしてもらうためには、最新かつ適切な機器や技術を使用しているかどうかを確認しましょう。アメリカのアスベスト分析の精度管理システムを導入し、定期外部監査を受けているなど、外部との提携で信頼度を高めている会社なら安心して依頼することができそうです。
また、分析できる内容についても確認しておきましょう。たとえばアスベストが含まれている層まで分析が可能であると、剥離剤の効果の有無を判断できたり、工事を依頼する際に説明しやすかったりと、依頼者の手間や負担を軽減することができます。
スピード
解体などの工事はスピード感が求められることも多いため、とくに急ぎの場合はすぐに対応してくれるアスベスト調査・分析会社に依頼するのがおすすめです。早い場合は分析速報を24時間程度で、調査速報を3営業日で報告してくれるような会社もあります。
スピード感を持って対応してもらえると、ほかの工程管理もしやすくなり、現場もスムーズに進められる可能性があるでしょう。ただしスピード対応を可能としている会社であっても、実際はすぐに対応してもらえないというケースもあるので、スピード対応している実績があるかどうかは、しっかりと確認しておく必要がありそうです。
実績の豊富さ
アスベスト調査の実績と経験は、信頼性を示すものでもあります。長期間にわたって安定した調査・分析のサービスを提供しているかどうか、これまでに依頼した方の評判がよいかを確認し、信頼できる会社を選ぶことが大切です。
また、すでに実績が豊富だからといって慢心するのではなく、つねに高い意識を持って新しい技術と知識の習得や導入を行っている会社なら、さらに安心です。そのような会社であれば、より正確な技術や視野の広い対応などを行ってくれる可能性があり、信頼度が高いといえるでしょう。
専門知識のあるアナリスト
アスベスト調査・分析会社には、調査のスタッフと分析のスタッフが在籍して正確な対応を行っていますが、そのスタッフの知識や技術の高さもチェックしておきたいポイントです。たとえばアスベストに関連する研究を長年行っており、アスベストに対する幅広い知識があるスタッフがいれば、より正確で最新の調査や分析ができるでしょう。
また、素人ではわかりにくい部分もある調査結果については、見落としを防止するための対策を行っている会社が安心です。なかでも、工事の事前アスベスト調査の報告書にアスベスト範囲図を標準添付するなど、誰が見ても判断できるような報告書を作成してくれる会社なら、質問もしやすく不安が残りにくいでしょう。
立地
アスベスト調査や分析を依頼する場合は、会社の立地にも着目してみましょう。東京なら、都心などアクセスしやすい場所にラボを設定している会社であれば、現場の行き帰りに寄ってサンプルを持ち込むことができるので便利です。
もちろんその分納期を早めることも可能ですし、郵便の手続きを行う必要もないので手間を省くこともできます。急ぎの場合でもすぐに対応してもらえる可能性もあるので、相談しやすいという点でも、訪れやすい場所にある調査・分析会社がおすすめです。
アスベスト調査の流れ
アスベスト調査にはいくつかのステップがあります。ここでは、それぞれの調査・分析で行うことや全体の流れをご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
書面調査
アスベスト調査でまず始めに行われるのが、書面調査です。書面や設計図などを見て、アスベストが含まれているかどうかを見極めます。とくに、高度成長期に建設された建造物はアスベストを使用している可能性が高いため、更に詳しい登記簿謄本、重要事項説明など建物に関するあらゆる資料を収集し、アスベストの有無を判断します。
現地調査
書面調査にてアスベスト含有の可能性があると判断されたら、現地でより詳しい調査を行います。目視による確認はもちろんですが、見落としやすい地下部分などを含めた正確な調査を行う必要があるのです。この調査で、アスベスト含有の可能性が高い箇所を特定します。
検体採取
現地だけでは判断が難しい場合は、アスベスト含有の可能性がある箇所の建材をサンプルとして採取し、専門機関へ分析を依頼します。採取する際は、同一材料と思われる建築材料ごとに代表試料を選び、最適な範囲を判断しなければなりません。
分析
分析では、まず「定性分析」という方法で採取したサンプルから、アスベストの有無を判定します。含有していると判定された場合は、その含有率を分析するための「定量分析」を行い、建材中のアスベスト含有率を確定させるのです。ただし、一般的にアスベスト含有率が0.1%を超えているかどうかを確定させるだけなら、定性分析のみで十分とされています。
報告書作成・提出
分析結果が出てすべての調査が完了したら報告書を作成して、労働基準監督署や各自治体に提出します。報告書には工事の概要、建築物などの概要、調査概要、建材ごとの調査結果と結果に基づいた作業時の措置などを細かく記載する必要があります。提出は解体・改修工事前に行う必要があるので、工期を見極めて、調査や分析の計画を立てる必要があるでしょう。
アスベストの調査・分析は分析精度の高い会社に依頼するのがおすすめ!
アスベストはすでに使用や製造が原則禁止とされていますが、アスベストを使用して建てられた建物が現在も数多く残っています。そしてその解体や改修を行う際に、作業員や周囲の住民への影響を与えないために、正しい調査や分析を行う必要があります。ぜひ分析精度の高い会社に依頼して、安全に作業が行えるようにしましょう。