
アスベストは、その優れた性能から多くの建物の建材として用いられてきました。しかし、アスベストの吸引によってさまざまな健康被害が発生することが次第に明らかになり、1975年から段階的に規制が始まったのです。そこで本記事では、アスベストによって発症しやすくなる病気や健康被害が疑われる場合の対応方法をまとめて解説します。
アスベスト吸引によって発症の可能性が高くなる病気
アスベストを吸入することにより発症する可能性のある病気として、主に以下の4つが挙げられます。順番にその詳細を見ていきましょう。
石綿肺
石綿肺は、アスベスト吸入によって発症する「じん肺」の一種で、肺が線維化し固くなる病気です。とくに、業務上で10年以上アスベスト粉じんを吸入した場合に発症するリスクが高いとされています。そして、潜伏期間は15〜20年と比較的長期にわたります。
肺がん
肺がんは、気管支や肺胞の上皮に発生する悪性腫瘍です。肺がんの発症には、肺細胞内に取り込まれたアスベスト繊維が影響していると考えられています。しかし、その詳しいメカニズムは未解明です。発症までの潜伏期間は15〜40年とされ、喫煙などほかの要因でも発症することがあります。
中皮腫
中皮腫は胸膜、心膜、腹膜などの部位に発生する悪性腫瘍です。男性発症者の約8割に、職業的なアスベストばく露が確認されています。中皮腫の特徴は非常に長い潜伏期間で、20〜50年におよぶことがあります。肺がんと異なり、喫煙と中皮腫発症の関連性は認められていません。
びまん性胸膜肥厚
びまん性胸膜肥厚を発症すると、肺を覆う胸膜が慢性的な炎症で線維化して厚くなります。そして、肺が膨らみにくくなることで呼吸機能が低下するのです。発症までの潜伏期間は30〜40年とされます。
アスベストによる健康被害の恐れがある場合にすべき対応
アスベストによる健康被害が疑われる場合、適切な対応が重要です。吸い込んだアスベストは一部が咳や痰を通じて体外に排出されますが、大量に吸入した場合には体内に残り続けることがあります。とくに、過去にアスベストを扱う業務に従事していた場合、肺にアスベストが滞留している可能性が高いです。そのようなケースでは、現時点ではそれを体外に除去することは難しいのが現状です。
アスベストばく露の可能性がある場合には、年に1回の健康診断を受けることをおすすめします。その際は、胸部エックス線検査を含む検査を行うとよいでしょう。ただし、一般的な健康診断では見逃される可能性があるため、労災病院や専門の医療機関を受診することが望ましいです。これにより、健康被害の早期発見と適切な対応が可能となります。
また、アスベスト関連疾患を発症した場合には、早期の治療が非常に重要です。病気の進行を抑えるためには、症状が軽度の段階で専門医療機関を受診することが重要です。息切れや咳、急激な体重の低下、血痰といった自覚症状がある場合は、速やかに専門医にかかりましょう。
アスベストによって病気を発症したときに受けられる補償
アスベストに関連する病気を発症した場合、原因が過去の業務にあると認められると、以下のような補償や給付を受けられる可能性があります。
労災保険
アスベストにばく露する業務に従事しており、労災保険に加入していた場合、労災保険給付を受けられるかもしれません。申請は労働基準監督署で行い、石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水といった業務上疾病が認められることが条件です。
石綿健康被害救済給付金
労災保険の対象外の人や時効により申請ができない人は「石綿健康被害救済法」にもとづく給付金を受けられる場合があります。対象となる疾病は、肺がん、中皮腫、著しい呼吸機能障害をともなう石綿肺、びまん性胸膜肥厚などです。申請は環境再生保全機構や保健所を通じて行います。ただし、良性石綿胸水は対象外です。
国からの賠償金(工場型)
アスベスト工場で働いていた場合、特定の条件を満たせば国に対する訴訟を通じて賠償金を受け取れるかもしれません。対象期間は1958年〜1971年で、この期間に石綿粉じんにばく露する業務を行い、中皮腫、肺がん、石綿肺などを発症した場合が該当します。和解金は550万円〜1300万円の範囲内で支払われます。
市アック国からの給付金(建設型)
建設現場でアスベストにさらされた場合、一定条件を満たせば「建設アスベスト給付金」を受け取ることが可能です。対象期間は1975年〜2004年で、石綿肺、中皮腫、肺がん、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水を発症した場合に申請できます。給付金額は病態に応じて550万円〜1300万円です。
企業に対する損害賠償請求
労働者をアスベストにばく露させた企業や危険性を周知せずにアスベスト含有建材を販売した建材メーカーにも、健康被害の責任はあります。そのため、企業やメーカーに損害賠償を請求することも検討可能です。ただし、この手続きは証拠の確保や複雑な訴訟手続きが必要なため、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
まとめ
アスベストは多くの建材に使用されてきましたが、吸引による健康被害が明らかになり、現在は厳しく規制されています。アスベストの吸引により、石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚といった深刻な病気を発症するリスクがあり、それぞれ潜伏期間が長いのが特徴です。過去にアスベストを扱う業務に従事していた場合は、専門医療機関での定期的な健康診断が推奨されます。もし健康被害が確認された場合、労災保険や救済給付金、国や企業への賠償請求など、さまざまな補償を受ける方法があります。早期発見と適切な対応が、病気の進行を抑える鍵です。