
アスベストの分析調査は、建物の解体や改修の際に必要です。しかし、外部の業者に頼ると費用が掛かることから、自社だけで分析調査をしたい企業もあるでしょう。結論からいうと、自社だけでアスベスト分析調査をすることはおすすめしません。本記事では、アスベスト分析調査を自社のみで行うリスクや注意点を解説するので、参考にしてください。
アスベスト分析調査が必要になるのはどんな場合?
まずは、アスベスト分析調査が必要となる場合について説明します。アスベスト事前調査には、書面調査と目視調査があり、これらはアスベスト診断士や建築物石綿含有建材調査者の資格をもった専門家が行います。
これらの資格は一定の実務経験を積んだ後、講習を受けて修了試験に合格することで取得可能です。アスベストを調査・除去する業務を行っている会社では、自社の社員に資格を取得させて調査を実施することもあります。
アスベスト分析調査は、書面調査や目視調査の結果、アスベストが使用されているかどうかが確定できなかった場合に行われます。分析調査は義務ではありませんが、調査を実施せずに「アスベストが含まれている」とみなして解体工事や改修工事を進める場合もあります。
アスベストを含むとみなされた場合、最も厳しい措置を講じて除去作業を行わなければなりません。このため、分析調査を行うことでその手間を省ける一方、除去作業の手間が増えるというデメリットも存在します。
アスベスト分析調査を自社だけで行うリスク・注意点
アスベスト分析調査を自社で行う場合、外部の専門業者に依頼するのが一般的です。そして、その費用は1検体あたり2万円台〜、調査が複数の検体を含む場合、1回当たり3万円台〜が相場です。費用を節約するために自社で分析調査を行いたいと考える企業もありますが、自社で行うにはいくつかのリスクや注意点があります。
資格・機材が必須
アスベスト分析を実施する技術者には、特定の条件を満たす必要があります。これには、分析調査講習を受講して修了考査に合格すること、建材中のアスベスト定性分析技能試験に合格すること、社団法人日本作業環境測定協会Bランク以上の認定分析技術者であること、または石綿分析技術評価事業修了者であることが求められます。
これらの資格を得るためには時間と費用がかかるので、本業に支障が出てしまうかもしれません。さらに、分析調査を行うためには、専門的な機材とスペースも必要です。調査を行うための機材は高額であり、適切なスペースが確保できない場合は新たに建物を確保する必要もあります。
そのため、オフィスの一角で簡易的に調査を行えません。また、機材を整備し、調査を実施できる環境を整えるためのコストがかかる点も大きな注意点です。
正確な分析調査には経験が不可欠
また、アスベスト分析調査を正確に実施するためには、経験が不可欠です。定性分析調査で主に使用される「JIS A 1481-1」では、最終的な判断は技術者の目視によるため、正確な判断を行うためには十分な経験が求められます。経験が不足していると、誤った判断をしてしまう可能性が高いです。
アスベスト分析調査は必ずしも実施する調査ではなく、検査を行わずに「アスベストが含まれている」とみなして解体工事や改修工事を進める場合もあります。しかし、その場合でも最も厳しい措置が求められます。自社で分析調査を行っても、調査件数が少なくて経験が積めない場合や、調査結果の正確性に欠ける場合も少なくありません。
その結果、事前調査結果を自治体に提出した際、正確性がないと判断されれば、届出が差し戻されるリスクもあります。
調査結果が出るまで時間がかかる
さらに、自社で分析調査を行う場合、調査結果が出るまでの時間がかかることも問題となります。規模の小さい会社では、分析調査を行うためだけに従業員を確保することは難しく、ほかの業務との兼任となる場合が多いでしょう。この場合、急ぎの調査に対応できないリスクが生じる可能性もあります。
調査に時間がかかることで、迅速な対応が求められる状況において、工事や改修のスケジュールが遅れたり、予定通りに作業が進まないという事態が起こる可能性があります。
アスベスト分析調査は専門の業者に依頼するのがおすすめ
上記で解説したリスクを考慮すると、アスベスト分析調査のノウハウがある外部の業者に依頼するのが無難でしょう。アスベスト分析の専門業者であれば、自社で有資格者や機材を用意する必要がないので、結果的にコストや手間の削減につながります。
また、アスベスト調査の正確性の面でも、アスベスト分析調査会社であれば安心できます。アスベスト分析調査は、従業員や顧客の健康被害の防止のためにも重要なプロセスです。「餅は餅屋」のことわざ通り、アスベストに関することは専門業者に依頼することをおすすめします。
まとめ
アスベスト分析調査を自社で行うと、資格取得や機材、適切なスペース確保など多くのコストと手間がかかります。また、経験が不足していると正確な判断が難しく、調査結果の正確性に欠けるリスクがあります。さらに、少ない件数で経験を積むことが難しく、調査結果が遅れたり、工事スケジュールに支障をきたす可能性も高いです。これらのリスクを避けるため、外部専門業者に依頼する方が効率的であり、長期的なコスト削減にもつながることが多いです。