建設業の人の中には、アスベストの除去工事にはどのような届け出が必要なのか気になる人も多いでしょう。そこでこの記事では、アスベストの除去工事の概要や注意点、工事の際に必要な各種届け出について、それらの届け出を提出する際の詳細な手順と届け出の要件についてなどを詳しく解説していきます。
アスベスト除去工事とは
アスベストの除去工事とは、アスベストが使われている建物を改修するときや解体するときに、事前にアスベストを取り除く工事のことです。この工事には、アスベストの除去作業はもちろん、アスベスト廃材を最終的に埋め立て処分する作業なども含まれます。
絶縁性・耐熱性・対摩耗性などに優れているアスベストは石綿ともよばれ、1970年代から90年代に日本に大量輸入されました。しかしその後、発がん性が問題視されるようになり、現在では製造や使用などが禁止されています。
そのため、建物を改修する時や解体するときには、アスベストの除去工事が義務づけられているのです。
工事の際に気をつけること
工事中にアスベストが空気中に飛び散ると、作業者や近隣の住民に健康被害をもたらします。そのため、工事の際には、石綿作業主任者、特別管理産業廃棄物管理責任者など、さまざまな役割を担う担当者を選ぶことやすべての労働者に石綿特別教育を施すことなどが求められるのです。
また、近隣住民への挨拶、建物の養生は欠かせないほか、作業員を守る防護服の着用なども義務づけられています。
アスベスト除去工事に必要な届け出
アスベストを含有する建築物を解体する際や建材を除去する際には、行政に各種の届け出を出す必要があります。
各種届出の必要性はレベルごとに異なる
各種届出の要・不要は、アスベストの飛散しやすさをもとに決められた3つのレベルごとに異なります。もっとも飛散しやすいアスベスト含有建築材はレベル1に分類され、石綿含有吹付け材がこれに当てはまるのです。
その次に飛散しやすいものがレベル2に分類され、石綿含有保温材や耐火被覆材、断熱材などが当てはまります。そして、そのほかの石綿含有建材がレベル3に分類されるのです。
必要な届け出は主に3つ
2023年現在、工事の前に必要な届け出は主に3つです。1つめは、特定粉じん排出等作業実施届出書で、レベル1とレベル2の建材を扱う工事では提出を求められます。2つめは、建設工事計画届で、レベル1の建材を扱う工事では必ず提出しなくてはいけません。
また、レベル2の建材を扱う建設業と土石採取業でも提出が必要です。3つめは、建築物解体等作業届で、建設業・土石採取業以外でレベル2の建材を扱う際に必要とされます。
そのほかの届け出
上記以外の届け出としては、特定建築資材の建築物等、かつ一定規模以上の解体工事などで提出しなくてはならない届出書や解体工事や改修工事などで提出しなくてはならない事前調査結果報告書などがあります。
この2つの届け出は、条件に当てはまればすべてのレベルの建材および、石綿なし建材の場合にも必要です。また、自治体によっては、条例などにそった自治体指定の届出書を提出しなくてはならない場合もあります。
アスベスト除去工事における届け出の詳細な手順と要件
最後に、アスベスト除去工事で求められる各種届け出について、その詳しい手順と要件を解説します。
特定粉じん排出等作業実施届出書
特定粉じん排出等作業実施届出書は、工事開始の14日前までに地方自治体に提出しなくてはなりません。建築物の大きさや規模に関わらず、レベル1とレベルに2に該当する場合は、必ず届ける必要があります。
なお、レベル3の建材を含む建築物などの解体工事の際には、作業計画を作成することが義務づけられているのです。
建設工事計画届
建設工事計画届は、工事開始の14日前までに労働基準監督署に提出する必要があります。こちらも、建築物の大きさや規模に関わらず、レベル1とレベルに2に該当する場合には必要とされているのです。ただし先述したように、レベル2の建材の除去工事においては、建設業と土石採取業を行うときのみ必要な届け出となります。
建築物解体等作業届
建築物解体等作業届は、工事の開始前までに労働基準監督署に提出する必要があるのです。この届け出は、建設業と土石採取業以外で、レベル2に当たる建材の除去工事を行う際に提出することになります。その際、建築物の大きさや規模の大小は関係ありません。
届出書
届出書は、解体工事開始の7日前までに地方自治体に提出する必要があります。コンクリートや木材などの特定建築資材を使った建築物などの工事で、一定の規模や要件を満たせば提出を求められるのです。
具体的には、床面積の合計が合計80㎡以上の建築物の解体工事、床面積の合計が500㎡以上の建築物の新築・増築工事、消費税を含む請負金額が1億円以上の建築物の修繕やリフォームなど、請負金額が500万円以上の建築物以外の工作物の工事が当てはまります。
事前調査結果報告書
建材にアスベストが含まれるかを調べる事前調査結果報告書は、工事開始前までに、電子申請ならば厚生労働省に、書面提出の場合には、地方自治体および労働基準監督署へ提出する必要があります。提出の有無は、工事の規模や要件によって決まるのです。
具体的には、解体部分の延床面積が80㎡以上の建築物の解体工事、請負金額100万円(税込)以上の建築物の改修工事や、特定の工作物の解体・改修工事、総トン数20トン以上の鋼製船舶の解体や改修工事が当てはまります。
まとめ
アスベストには発がん性があることから、現在の日本では製造や使用が禁止されています。そのため、建築物の改修時や解体時には、アスベストを除去するための工事が義務づけられているのです。工事の際にどのような届け出が必要なのかは、建築材のアスベスト飛散レベルなどによって異なります。
この記事では、アスベストの除去工事の概要や注意点、工事の際に必要な各種届け出について、それらの届け出を提出する際の詳細な手順と届け出の要件についてなどを詳しく解説しました。ぜひ参考にしてください。